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給与の仕訳と残高確認|預り金・法定福利費が合わないときに見る場所

法人カードの明細を会計ソフトに連携して経費処理を効率化するイメージ 労務・給与実務
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給与の仕訳は、毎月同じ形で入力していると、つい流れ作業になりがちです。

しかし給与の仕訳には、従業員から預かって後日納付する金額が含まれています。この預り金は、いつ、いくら残っているべきかが決まっています。逆に言えば、残高を見れば処理が正しいかどうかを確認できます。

この記事では、法人経理の実務経験をもとに、給与仕訳の考え方と、預り金・法定福利費の残高が合わないときに確認する場所を整理します。

※締日や支給日、加入している保険者、会社の給与規程によって内容は異なります。保険料率や納付期限、社会保険の手続きに関する個別の判断については、税理士、社会保険労務士、年金事務所、お住まいの市区町村などへご確認ください。

給与の仕訳は「支払う」だけではない

給与計算では、支給する金額から複数の項目を控除します。

  • 源泉所得税
  • 住民税(特別徴収の場合)
  • 社会保険料の従業員負担分
  • 雇用保険料の従業員負担分
  • その他の控除(財形、社宅、貸付金の返済など)

これらは会社の収益ではありません。従業員から一時的に預かり、会社が代わりに納付するお金です。そのため、支払った時点ではなく、納付した時点で会社の手を離れます。

この「預かってから納めるまでの期間」があるために、月末時点で預り金の残高が発生します。

給与仕訳の基本形

月末締め、翌月20日支給の会社を例にすると、給与の仕訳はおおむね次の形になります。

借方 貸方 内容
給料手当 支給総額
法定福利費 社会保険料などの会社負担分
預り金 源泉所得税、住民税、社会保険料の従業員負担分など
普通預金 差引支給額

勘定科目の名称や、預り金を項目ごとに補助科目で分けるかどうかは会社によって異なります。ただし、預かった金額が貸方に立ち、納付時に借方で消えていくという流れは共通です。

預り金を項目ごとに分けておくと、後述する残高確認が格段にやりやすくなります。分けていない場合は、補助科目の設定を検討する価値があります。

給与ソフトから連携すると、仕訳は細かくなる

給与の仕訳は、集計表を見ながら自分で入力することもできます。実際、自分で仕訳を切ったほうが数字の中身が頭に入る、という感覚はあります。

一方で、給与計算ソフトと会計ソフトを連携させると、次のような利点があります。

  • 従業員ごとに部門を設定しておけば、部門別に仕訳が分かれる
  • 基本給と残業代を区別して計上できる
  • 集計表を転記する過程がないため、金額の入力ミスが起きにくい

特に金額ミスの少なさは大きな利点です。給与は金額が大きく、間違えたときの影響も大きいためです。

ただし、連携すれば確認が不要になるわけではありません。設定が誤っていれば、誤ったまま毎月自動で計上され続けます。手入力より発見が遅れる可能性もあります。

会計ソフト側の連携全般の注意点は、法人カードの明細をマネーフォワードに連携する|経理が楽になる部分と、確認が必要な部分で解説しています。

預り金の残高は「いつ、いくら残るか」が決まっている

ここがこの記事の中心です。

預り金は、納付までの期間だけ残ります。つまり、月末時点の残高がいくらになるべきかは、あらかじめ計算できます。この「あるべき残高」と実際の残高を比べれば、処理の誤りを見つけられます。

以下は、月末締め・翌月20日支給の会社を例にした場合です。

預り金の種類 4月末時点のあるべき残高
源泉所得税 4月20日支給分の預りのみ(3月20日支給分は4月10日に納付済みのため)
住民税 4月20日支給時に徴収した金額(5月10日に納付予定の金額)
社会保険料 翌月徴収・翌月納付であれば0

源泉所得税

源泉所得税は、支給日の属する月の翌月10日までに納付します。そのため4月末の時点では、4月20日支給分だけが残ります。

納期の特例を受けている場合は納付のタイミングが異なるため、残るべき金額も変わります。

住民税

特別徴収の住民税も、徴収した翌月10日までに納付します。したがって4月末残高は、翌月納付予定の金額と一致するはずです。

この金額は、市区町村から届く「特別徴収税額の決定・変更通知書」で確認できます。通知書の月額合計と残高が一致するかを見るのが、最も確実な確認方法です。

退職者の一括徴収があった月など、通知書どおりにならない場合もあります。その場合は差額の理由を説明できる状態にしておきます。

社会保険料

当月分の保険料を翌月支給の給与から控除し、その月末までに納付している場合、月末時点の預り金残高は0になります。預かった金額と納付した金額が同じ月に相殺されるためです。

残高が0にならない場合、次のような理由が考えられます。

  • 月末が土日祝にあたり、納付が翌営業日にずれている
  • 賞与にかかる保険料が、その月の納付額に含まれていない
  • 控除した金額と納付額が実際に食い違っている

上の2つは時期の問題なので、翌月に解消します。問題は3つ目です。

残高が合わないときに見る場所

給与計算ソフトの設定が正しく行われていれば、給与側で金額を間違えることは多くありません。合わなくなる場合、原因は次のいずれかに絞られます。

納付時の入力ミス

納付書の金額と、会計ソフトに入力した金額が違っているケースです。まずここを確認します。納付額そのものを間違えている場合もあります。

控除設定のずれ

社会保険料は、標準報酬月額に基づいて控除額が決まります。定時決定や随時改定の結果を給与計算ソフトへ反映していないと、実際の報酬月額と控除額がずれた状態が続きます。

この場合、毎月少しずつ差額が積み上がるため、気づいたときには原因の特定に時間がかかります。反映のタイミングは決めておき、担当者が変わっても引き継がれるようにしておきます。

なお、標準報酬月額の決定や改定に関する具体的な判断は、年金事務所や社会保険労務士へご確認ください。

入退社処理の遅れ

社会保険料の従業員負担分は、原則として労使折半です。そのため、預り金は納付額のおよそ半分になります(子ども・子育て拠出金は全額が事業主負担です)。

ただし、加入している健康保険組合によっては負担割合が折半でない場合があり、端数処理の関係で厳密に半分にならないこともあります。

入社や退職の処理が遅れると、納付額と控除額の対応関係が崩れ、一時的に残高が合わなくなります。この場合は、処理が完了した時点で解消します。

入退社処理の遅れは、従業員本人にも影響する

残高が合わないことは、経理側の問題として扱われがちです。しかし入退社の処理が遅れている場合、影響を受けるのは会社の帳簿だけではありません。

  • 控除額が正しくないため、実際の手取り額が本来と異なる
  • 後からまとめて控除することになり、従業員の負担感が大きくなる
  • 加入記録が正しくないと、将来の年金額に関わる可能性がある

ここは経理が判断する領域ではありませんが、「帳簿が合わない」という以上の意味があることは意識しておきたい部分です。手続きの内容については、社会保険労務士や年金事務所へご確認ください。

給与計算システムを使っていれば、従業員ごとの毎月の控除額を集計できます。納付額との差を人単位まで追えるため、申請漏れや処理の遅れを早い段階で見つけられます。残高の差額を金額だけで追うより、はるかに早く原因にたどり着けます。

給与関連の残高チェックリスト

月次決算では、各月末を締めた残高試算表で以下を確認します。

  • 預り金を項目ごとに区分して管理している
  • 源泉所得税の残高が、翌月10日納付予定額と一致している
  • 住民税の残高が、特別徴収税額の決定・変更通知書の金額と一致している
  • 社会保険料の残高が0になっている(翌月徴収・翌月納付の場合)
  • 0でない場合、納付日のずれや賞与分など理由を説明できる
  • 納付書の金額と会計ソフトの入力額が一致している
  • 定時決定・随時改定の結果を給与計算ソフトへ反映した
  • 入社・退職の処理が給与計算ソフトに反映されている
  • 法定福利費の金額が前月と大きく変動していないか確認した
  • 変動がある場合、入退社・賞与・料率改定など理由を確認した

月次決算全体の流れは、法人経理の月次決算の進め方|締め作業の手順とチェックリストで解説しています。

まとめ

給与の仕訳は毎月同じ形になりますが、預り金の残高は「いつ、いくら残るか」があらかじめ決まっています。この性質を使えば、残高を見るだけで処理の正しさを確認できます。

源泉所得税は翌月納付分だけが残り、住民税は通知書の金額と一致し、社会保険料は翌月徴収・翌月納付なら0になる。この3つを毎月確認する習慣があれば、誤りが積み上がる前に気づけます。

そして、合わない原因の多くは納付時のミスか、設定の反映漏れか、入退社処理の遅れです。金額だけを追うのではなく、従業員ごとの内訳まで戻れる状態にしておくことが、結果的にいちばん早い解決につながります。

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